Office365に限らず、多くのクラウドサービスの有料プランにはSLAが定められており、一般的にサービスの稼働率を基準としてSLA未達時にユーザーへの補償を行う旨が定められています。
この記事ではOffice365において稼働率がSLAを割った際のサービスクレジットの支払い申し立ての手続きについて記載します。
※2022/07/21 Teamsで大規模障害が発生したのでSLAドキュメントのリンクを更新
Microsoftの定めるSLA
MicrosoftはSLAの基準となる稼働時間や対象サービス、 SLA基準に基づくサービスクレジットの支払い申し立て(長いので以後「申し立て」) の手法についてドキュメントを公開しています。
ココ に言語ごとにまとめられており、この記事の内容はドキュメントを読めばすべて書いてあります。
詳細はドキュメントを読んでいただくとして、申し立てを検討する際に重要になってくるのが以下のポイントです。
- 「サービスクレジットの支払い」であり、現金が返ってくるわけではなく請求からクレジット相当分が相殺減額される仕組み
- 稼働率の計算は月ごとで行い、対象月の翌月末までに申し立てる必要がある
- 申し立てができるのはサービスごと月1件まで
- リセラー経由で購入していても直接Microsoftに申し立てる必要がある
稼働率の計算
稼働率は各サービスごとに定められており、稼働率に応じたサービスクレジットでの返金が行われます。
ExchangeOnlineでいうと以下の通り定められています。(2019年12月時点での値)
- 99.9%未満 … 25%
- 99%未満 … 50%
- 95%未満 … 100%
2019年11月にはExchangeOnlineで大規模な障害があり、障害報告書に記載された影響時間は610分でした。
稼働率は ( (サービス提供時間 – 障害時間) ÷ (サービス提供時間) ) × 100 で求められますので、11月の場合は ( ( (60 × 24 × 30) – 610) ÷ ( (60 × 24 × 30) ) ) × 100 = (42590 ÷ 43200) × 100 = 98.58 となり、98.58%の稼働率でした。
申し立てが認められた場合、50%のサービスクレジットが返ってくることになります。
※上記は簡略化した計算であり、元の資料では「ユーザー時間」という単語を使っています。定義の詳細は元文書を当たってください。
申し立てに必要な情報を集める
サービス稼働率がSLAを割った場合、Mircosoftが親切に計算して自動で補填してくれるということはなく、利用者側が申し立てを行う必要があります。
Microsoftが申し立てに際して要求する情報は以下の通りです。
- インシデントの詳細な説明
- ダウンタイムの発生日時及び継続期間
- 影響を受けたユーザー数、及び所在地
- インシデント発生時に講じた解決措置
- 契約番号(契約形態によって異なる)
これらの情報を取得し、Office365のサポートリクエスト(SR)から申し立てを行います。
申し立てサンプル
実際に2019年11月に発生したインシデントに対して申し立てを行いましたので、一部改変したものをサンプルとして記載します。
■対象サービス
ExchangeOnline
■契約番号
0123456
■インシデントの詳細な説明
EX196121で報告の出ているインシデントに伴い、テナント外からのメール及び添付ファイル付きの社内メールが受信できませんでした。
■ ダウンタイムの発生日時および継続期間に関する情報
事象開始日時: 2019/11/19 10:40 (JST)
事象回復日時: 2019/11/19 20:50 (JST)
影響時間: 610分
■影響を受けたユーザーの数および所在地
ExchangeOnline Plan2: 100ユーザー
ExchangeOnline Plan1: 100ユーザー
所在地: 日本
■インシデント解決のために講じた措置
社内外からのテストメール送信及びメッセージログの検索
Microsoftへの事象確認の問い合わせ
弊社が利用しているメールゲートウェイサービスへの問い合わせ
まとめ
Office365のサービスクレジット支払い申し立てについてはあまり資料がなかったのですが調べてみるとそんなに難しいものではありませんでした。
実際に申し立てが認められるかどうかはMicrosoftの判断次第ですが、申し立て自体はMicrosoftとの契約で正式に認められた行為ですので稼働率を下回るような障害があった際には情報を揃えて実際に申し立てを実施してみるとよいでしょう。
2020/02/10 追記
その後、申し立てが認められたとの通知があり、リセラーからサービスクレジットの支払いについての連絡がありました。
ただし、障害の影響時間は障害報告書に記載された時間がそのまま適用されるわけではなく、テナントまたはゾーンによって変わるのか支払われるサービスクレジットの割合が異なるテナントがありました。